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リスペクト

 サッカーのハリルホジッチ氏が、監督を解任されたことについて憤慨しているというニュースが出ているが、その際に、自分へのリスペクトがない、という批判をしているように報じられていた。

 もっともご本人、普段は何語を話しておられるのか、会見では何語で語られたのか承知していないので、リスペクトと言ったのか、別の単語だったのかは定かではないが。解任そのものについては、事情を分からないので何か言うようなものではないが、このリスペクトという言葉には以前から違和感があったので、それに関して少々。

 一般的には、敬意とか尊敬というふうに訳されているように思う。英語の理解として、そういう訳で良いのかどうか、厳密には承知しないが、ともかく、一般的にはそう訳されているようだ。でも、だとしたら、自分に対するリスペクトがないとか、リスペクトを要求するというのは、何だか奇妙に思える。尊敬というものは、要求してどうなるものではない。それは、本人が持っているものによって、回りの人々が自ずと動かされて出てくるものであって、強制されてなされても何の意味もない。感動というものと似ている。展覧会に行って、飾られている絵を見て、感動しろ、とか、感動すべきだ、と言われたら、腹立たしいだけである。感動するかどうかは、その絵の実力次第、あるいは、その絵と自分の感性との波長が合うかどうか次第であって、強要させてもどうにもならないし、あるいは、自らの意思で感動することにした、と心を決めたとしても、それはとうてい感動とは言えない、奇妙な代物になってしまうはずだ。だから、昨今、よく口にされる、リスペクトの必要性というような言い方には、以前から、どうも違和感がある。

 そんな違和感を思い巡らしていて、ふと、リスペクトというものを、礼儀という言葉に置き換えることができるのであれば、これは世の中での使われ方に、案外ぴったり合うのではないか、と思った。たとえば、前監督への対応において、もし、礼儀というものが欠けていたとしたら、解任するかどうかの判断、あるいはそういう決断をしたとしても、それを伝えたりする際の対応において、相手に対する礼儀をちゃんとしていたのかどうかという、そういう意味での憤慨とかなのだとしたら、それならわかる。どんなに意見が合わない相手だとしても、それでその人を邪険に扱ったり、投げ捨てるような対応をするとしたら、それは人間としての基本的な資質を欠いていると言われても仕方がない。でも、自分を尊敬すべきだと要求するのは、かえって自らをおとしめているようにも感じてしまう。

 先ほどの絵画展でもそうだ。感動するかどうかはその人の自由だし、全く評価できないと思うのも自由だし、二度と来るものかと決意するのも自由だ。でも、会場の中でブツブツと批判を口にするのは、その絵に好印象を抱いているかもしれない回りにいる人たちにとっては困惑させられるものであるし、あるいは、一生懸命にその展覧会を開いた人々への礼儀に反する。批判的な評価をすべきではない、という意味ではないが、礼儀というものは必要だ。たとえゴミだと感じたとしても、だからといって、勝手に捨てて良いわけではないのは、所有権の問題だけでなく、礼儀の問題でもある。

 尊敬というのは、相手次第のものである。だが礼儀は、相手がどうかは関係なく、自分の側の問題である。だからこそ、礼儀は強制され得るもので、すべきと言えるもので、一方で、尊敬とか敬意というのはすべきと定義されるような部類のものではない、そのように思われる。

 リスペクトとカタカナ語で使われることが多いようで、もともと私としてはカタカナ語はあまり好みではなくて、必要最上限に絞るべきだと思っているのだけれど、この言葉に関しては、意味合いがとても大事なことだから、もし、本気で尊敬という意味で使うのか、それとも、礼儀というような意味合いで使おうとしているのか、その違いはしっかりと分けておいたほうが良いだろうと、そんなことを考えた次第である。

 あっ、ここで言っていることは、聖書が語る、「互いを自分よりもすぐれていると思いなさい」という教えが求めていることとは別の次元の話、である。念のため。そっちは、もっと積極的であるし、さらに言えば、そこに神がおられて、神が大切に思っている相手がいて、というようなことが伴っての話である。だから、今度はそれこそ、相手と自分との間の事柄、ではなくて、もっと大きな話として、この世界をどう見ているのかという話として、のことである。世間でリスペクトという言葉が使われている時に、そんなところは考えてもいないだろうから、ということでの、上に書いた話、である。

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