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見送る

 教会の人の葬儀があった。

 90歳になろうとしていた方。体調も徐々に力を失いつつあって、時間の問題であることは承知していたこと。でも、覚悟していることと、その現実に向き合うこととはまた別の話。
 前夜、告別、そして火葬と立ち合い、牧師として司式をし、そうして、葬りの業に携わっていったのだが、ずっと上、親の世代の方なのだけれど、なんだろう、ちょうど親が子どもを見守ろうとするような、そんな感覚に近いものを覚えていた。例えはあまり良くないかもしれないが、小学校に入ったばかりの子を、朝、送り出すような感覚。ちゃんと学校で楽しく過ごせるように、交通事故には気をつけて、忘れ物はないか、身だしなみは、なんていうふうに世話をしながら、行ってらっしゃいと送り出す、あの感覚。
 もちろん、葬儀なのだし、それに神が迎え入れてくださるからこその最期であって、そんなあれこれと心配などする必要もないし、忘れ物なんてあるはずもないのだが。だから、行ってらっしゃい、と背中をポンと押し出すような、そんなふうにして、旅立った人を送り出す役割、の感覚なのだ。
 カトリックが言う「神父」という呼び名、プロテスタントではもちろん使わないし、意味合いも違うのだけれども、でも、やはりどこかで、親が子を思うようにして、葬儀の業に携わっている自分がいることを思わせられていた。
 教会のご高齢の方々には、まだまだ元気に、そして、次の牧師が来てからお葬式をしてもらったらいい、とも話しているのだけれど、そのことはまあ、神ご自身しか知らないことなのだけれど、でも、私のほうがまだしも若いわけだし、そういう順番からすれば、いずれはまた、この教会の主任牧師としての立場は次に移っていたとしても、何らかの形で見送る側に立つことになるのだろうとは思う。
 携われることを喜びつつも、でも、見送り続けるのは決して簡単なことではなく、こうやって人々の生涯に立ち合い、そして見送っていくことが、牧師としての大切な役割なのだなあと、痛感させられている。
 故人はすでに何の心配もいらない。でも、私たちの歩みは翌日から動き出している。そして、見送る者としての祈りも、心構えも、あるいは、日々の普段の歩みへの立ち返りも、一つ一つ、大事なこと。しっかりと大きくて重い業が、まずは終わった。

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コメント

「小学校に入ったばかりの子を、朝、送り出すような感覚」って、まだないですね。だいたい、葬儀はいつもどぎまぎで、そんな心のゆとりはないです。牧師に成り立ての頃は、地方の葬儀屋さんはキリスト教葬儀の経験がほとんどなく、それに類する備品ももっていない。だから、はらはらドキドキが続きました。秋田に移ってからは、葬儀屋さんに自作のキリスト教葬儀のマニュアルを渡し、幾分落ち着いてできるようになりましたが、でも、ハプニングはつきものです。
私は仏式含めて葬儀に参列する機会がけっこう多くあります。最近は美人の女性と、イケメン男性の葬儀が続きました。みんな、棺の中を覗き込んで、その容姿をほめること、ほめること。それで、最近思っていることは、自分の葬儀の場合、棺の中を覗き込まれたくないということです。取り囲まれて、注視されて、ああでもないこうでもないと言われて、そういうのを想像したら、自分の時は仮面をかぶせてもらうか、うつぶせに寝せてもらうか、どちらかにしようと思ってしまいます。顔を見られないようにするためには、布で全身ぐるぐる巻きもいいかもしれませんね。
昨年の葬儀で、葬儀屋さんが、棺の最大サイズは火葬の釜の関係で、205×65㎝だと教えてくれました。なので、プロレスラーやお相撲さんは棺に入らないので、布にくるんで、ポンと火葬するそうです。こういう葬儀もいいいかも。エコですし。どうせ棺なんて金をかけても燃えてしまうわけだから。最近はダンボールの棺桶もありますね。あれもエコです。
話しはそれましたが、言いたかったことは、ケイさんのちょい前の「若き人々」といい、今回のといい、文章がじいさん臭いということです。水戸黄門っぽい。まぁ、お互いに、棺桶に足を入れたり引っ込めたりしているような年齢にはなってきましたけれども。

投稿: 斎藤和彦 | 2018/06/06 17:53

はい。「じいさん臭く」なっていることは自覚しています。それもまた良し、と思っているのですが。などと言うと、教会の上の世代の人たちからは呆れられそうです。気力、体力はまだまだ元気、ものの考え方とか、そういうあたりは、ちゃんと老成したい、と思うのですね。

投稿: kei | 2018/06/06 22:48

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