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震撼

 西日本の豪雨に呆然という思いがしている。

 遠く離れた地域だから、ニュースなどで見聞きしていただけだけれど、大雨の予報が出て、甚大な被害が予想されると気象庁からの警告が発せられているのを聞きながらも、まさかここまでとは思いもしなかった。確かに昨今のゲリラ豪雨は、近隣の水量を一気に押し上げるということは承知しているし、街中でも下水があふれたり、近隣にも頻繁に水没するガード下の道路がある。それでも、ゲリラ豪雨というのは短時間で通り過ぎるわけで、浸水被害までは生じたとしてもここまでの事態までは思い浮かばない。それこそ、せいぜい家の二階に上がっていれば、いのちそのものに別状はないし、水没した道路だって数時間で回復、という感覚だった。大水による甚大な被害というのは何日も激しく降り続いた場合のことで、今回など、まだまだそれほど長時間降っていたわけではないし、堤防だって、長く圧迫されれば危ないけれど、一日や二日でどうなるものではあるまいと、専門家からすれば愚かな感覚かもしれないけれど、そんなふうに思い込んでいた。避難所への移動を呼びかける報道も、念のため、という意味合いとして受け止めていたのが正直なところ。

 でも、そういう思い込み、あるいは個人的な判断というものが、ほとんど役に立たないことがあるのだと、痛感させられている。地震とか津波については、3.11で痛いほど思い知らされたけれど、大雨の類はまだまだ身近なもので、台風などでも経験済みのことと思っていたのだが、それは浅はかであることを、テレビの画面を見ながら痛感させられている。

 ただ、それならいつか、同じような天候になって、同じような警報が出たときに、はたして自分が動くかどうかについて、正直に言えば、あまり自信がない。そしてたぶん、同じように思ってしまう人は少なくないのだろうと、そう思わせられる。警報が届かない所もあるし、聞こえていても受け止め方は様々である。受け手の側としてそれで良いかどうかは問われるべきだろうが、ただ、それがこの社会の、人々の現実だとすれば、それでもなお避難させ得るような方策は何だろうかと、そのことを必死に考えるべきなのだろうと、思い知らされた感じだ。

 でも、そういう方策を見出すのは決して容易なことではないだろう。皆、頭では分かっているつもりなのだから。そういう中で、どこかのテレビで語られていた方策は、意味がありそうだと思った。それは、自分自身がどうかではなくて近所に暮らす身体が弱い方のことを考えて、その人のためには早めに一緒に避難した方が良いだろうと判断する、そのくらいの感覚で動くのがちょうど良いという提案だった。そう、確かに、自分は大丈夫と考えやすいのだけれど、身の回りの人のことを思って、その人を助けるために、ということならば、たぶん、早めの動きが推進されるかもしれない。こういうふうな提案がたくさん積み重ねられていったら、あるいは事態が動いていくのかもしれないと、そういう必要性を自分自身の感覚を振り返りつつ、思わせられている。

 けれど、避難するというだけでは事は済まないだろう。今回のような状況を見ると、理論的には、川岸近く、防災マップで危険視されているような地域には家を建てないのが一番で、あるいは、山に近い頃には住まないのが一番で、という話になっていくようにも思う。でも、現実にはその対応はとても難しいのは言うまでもない。それぞれに馴染んだ場所というものがあるし、それに、1億2千万以上が、皆、山からも川からも離れた高台に家を建てる、ということは、ほぼあり得ない。そうなると、まあまあ大丈夫だろうと言えるようなところに固まって暮らすということは、理論としては想起されたとしても、とうてい現実的とは言えない。とすれば、危険と承知の上でなお住み続ける、という選択肢にならざるを得ず、でもそれは、問題の解決には全くならない。堂々巡りである。

 率直なところ、すぐには答えが見当たらないようにも思う。豪雨そのものを回避できない今現在、できるのは事前の対応と、適格な避難行動なのだけれど、それが決して容易ではないことを痛感させられる。今回の被害の大きさに、胸がつぶれる思いであるが、それは、こういう事態をどうやって回避できるのかということについての、その答えが見当たらないように思えるそのことが、なおいっそう心を震えさせているのだと、感じている。まさに英知が求められる。どうか、ぜひ、良き知恵が社会全体として蓄積され、試みられ、そして、研ぎ澄まされていくようにと、切に願う。

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